著者:著:裕夢、イラスト:raemz
出版:小学館(ガガガ文庫)
既刊最新刊:9巻(次巻未定)
目次(ページ内リンク)
青春のようなそうではない何かのような 痛みに忠実に向き合った青春の記録
注意
まず、本作をラブコメとして紹介するのはどうかなーと思いながらこの記事を書いています
笑えて、それでいてちょっぴり切なくなるようなものをラブコメとするなら、ちょっと違うんだろうなと
特に1巻はそれなりにヒロイン達がちゃんと出てくるもののどちらかといえば賑やかしの友人のようで、とある男子生徒の救済がストーリーの主軸になっていて、ラブ要素はないとは言わないものの主軸では決してない
そしてどうにもこうにも日常パートのやり取りが寒いのです
その点は無理に持ち上げたりフォローしても仕方がなく、本作の魅力はむしろそこはそういうものと割り切った先に別に存在していると認識した上で読む方がいいのだろうなーという風に思います
ヒロインず
千歳朔(ちとせ さく)と内田優空(うちだ ゆあ)
青海陽(あおみ はる)と七瀬悠月(ななせ ゆづき)
柊夕湖(ひいらぎ ゆうこ)
西野明日風(にしの あすか)
最後の明日風以外は、クラスメイトで普段から付き合いがあります
特別扱い感ありますが、作中のメタ的にすごい特別なポジションかというとそうでもないかも?
ヒロイン達との関係をどうまとめていくのか気になるところです
千歳くんはラムネ瓶のなか
このタイトルについて、どう思うでしょう
読み始める前は、千歳くんが本当にラムネ瓶の中に入っちゃう、小さくなるみたいなファンタジー要素でもあるのかと思ってましたが、これは作品のテーマを抽象的に表現しているようです
手を伸ばしても届かない存在としての比喩、というのが一番率直な解釈でしょうか
この手の比喩はいくらでも解釈のしようがありますが、とにかく主人公の千歳朔の生き方……どこまでも自分を高め、理想を譲らず、そして孤独であることを表現しようとした形の一つなのでしょう
いずれにせよ、千歳くんの精神のあり方、生き方が主題の一つになっていて、完全なようで完全ではない彼がどうなっていくのかを追う話になっていくのではないでしょうか
ノベルゲーライクな設定、展開?
印象として、1巻をヒロイン紹介も兼ねた導入エピソードとして、あとで個別攻略に移っていくノベルゲームのような構成を感じました
主人公が完璧超人なのも、その流れを感じます
ラフメイカーとか、野ブタをプロデュース的な導入とか、なんとなく同年代っぽさが……まあそれはそれとして
本作の何に魅力を感じるかはもちろん人それぞれでしょうが、秀でているのは人間心理の具体的解釈と、主人公の千歳のアンバランスで自己犠牲的な生き方でしょう
結果というか人物像は正反対もいいとこですが、その辺りの感覚は通称俺ガイル「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」の主人公に近いものを感じます
なんだかんだ男は、やる時はやる、自分が泥を被って解決する、みたいな男が好きなのかもしれません
……これが千歳朔なんだ。それを理解した瞬間、俺はなぜだか全身にぞわりと鳥肌が立った。この人はきっと、こんなことをずっと繰り返して生きてきたんだ。途方もない。なんて途方もない道のりなんだろう。俺がこれまで見てきて、憧れていた千歳朔なんて、多分一番薄っぺらい表層でしかない。
出典:著:裕夢、イラスト:raemz『千歳くんはラムネ瓶のなか_1巻』@小学館
このセリフ(心の中ですが)がまた、男のものであるのがこれはラブコメか? というところの所以でもあるわけですが、この作品の目指すところを端的に表している言葉でもあるように思います
背負わなければならないと叫ぶ俺がいる。断らなかったのはお前自身だ。嫌なら最初からこんな話を受けなければよかった。「できない」と言わない、「無理だ」と認めない、そんな千歳朔という理想像を保つために健太を利用しているのはお前だ。だったら、せめて結果にぐらい責任をもて。どちらにせよ、失敗した瞬間に千歳朔ではいられなくなる。
出典:著:裕夢、イラスト:raemz『千歳くんはラムネ瓶のなか_1巻』@小学館
これは千歳自身の内心ですが、意味するところは同じようなところでしょう
こうした心理や思考の描写は本当に巧みで、なかなかコミカライズでつまむのにも限界があるので、原作ラノベで読むべき作品の一つだと思います
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