著者:松井優征
出版:集英社(ジャンプコミックス)
既刊最新刊:15巻(次巻 2024年6月頃見込み)
目次(ページ内リンク)
・それって取り上げるほどの時代なのか?
・意外なほどに史実に忠実なストーリー
大きなストーリーの流れ
キャラ
・北条時行
・足利尊氏
・諏訪頼重
・逃若党
刊行情報
逃げて生きて戦い続ける幼い英雄 激動の南北朝時代を時には忠実に時にはエンタメに描く
なかなか珍しい鎌倉幕府滅亡〜南北朝時代を扱った歴史もの
それって取り上げるほどの時代なのか?
と、何も知らないでいる時はあるいは思うかもしれません
日本史の中でクローズアップされるのは、主に織田信長〜江戸末期の新撰組辺り
まして鎌倉幕府成立の義経がいる辺りならまだしも、鎌倉幕府滅亡の頃合いです
歴史の教科書でもわりとさらっと流されがちな影の薄い時代なイメージがあります……が
読んでみて、そして知った事実を確認してみると、びっくりするぐらい面白い時代でした
そもそもの史実がエグい
一族を滅亡させられた十歳そこそこの少年(諸説あり)が、鎌倉を奪還するなど超衝撃です
当然、それが本作の主人公である北条時行ですね
意外なほどに史実に忠実なストーリー
なぜ、あまり取り上げられないし、なんならつまらなくても一通りこなすはずの歴史の授業ですら雑なのか
……おそらく、史実自体が複雑かつ滅茶苦茶だからなのだと、本作を読んでいて思いました
そんなわけないだろが史実としてまかり通り、誰もが理解できる必然が存在していない
そこを史実をなぞりながら、一見不可解なことを何だか納得できるようにしているのがすごいところ
面白い上に、歴史の解釈の本としても価値があるように思います
もちろん、細かいファンタジーはエンタメ的な嘘に決まっています
しかし、どうしてこんなことがこの時代に起こったのか
それを登場人物の心理を掘り下げて、納得感ある形で整えています
歴史で、鎌倉幕府が滅びた理由に、元寇で家臣が消耗した割に恩賞を与えられなかったから、みたいなことが言われますが
それだけで滅ぶわけもなく、その答えの可能性の一つがこの作品にあるように感じました
大きなストーリーの流れ
ストーリーは今のところ大きくは史実の通りとなっています
鎌倉幕府は滅ぼされ、混乱の中に朝廷が2つに分かれる南北朝時代へと移り変わっていきます
ここに微妙に歴史の空白というか、鎌倉幕府滅亡1334年から南朝成立1336年
正確性にはご容赦いただくとして、2年の空白が存在します
ここで中先代の乱が起こっていて、それこそが鎌倉幕府の遺児、北条時行が中心人物として起こされたもの
そして南朝の成立にもまた時行が関わっている
この間わずか2年……よくよく考えれば時行の激動っぷりが言われずともわかるというもの
大きくはこの流れに沿って、史実だけでは埋まらないその間の出来事を、こんな感じだったんだろうなぁ……と思える人と人の関わりの解釈により組み立てられています
キャラ
北条時行
主人公
日本史に登場する北条家の正室子
作中である程度年齢も重ねていきますが、概ね十歳前後という驚きの若さ……というかここまでくると幼さですね
タイトルの通り、逃げ上手を最大の長所として持っています
それは、戦場から逃げるということにも時に活かされますが、本作ではどちらかというと回避性能の高さとして表現されます
可愛い系の容姿とそれでいて意思が強かったりする感じが、作者の松井さんの作風に合ってますね
基本的には史実の通り、鎌倉滅亡の裏で奪還やら何やら派手な展開に巻き込まれていきます
足利尊氏
初代室町幕府将軍
本作では、ラスボス的立ち位置で強敵として君臨し続けます
カリスマ性と狂気を併せ持ったような人物として描かれています
エンタメ的にそうしたところもあるでしょうが、真っ当な人物にするとどこかで史実の筋が通らなくなる不思議をたくさん抱えているので、実際の人物像もカリスマというか神がかったものがあったのでしょう
本作は、平和な鎌倉が尊氏の裏切りによって滅亡していくところから描かれます
諏訪頼重
紹介順に迷いましたが、やはり超重要キャラとして、他の同世代メンバーより先にしました
先の両名と同様に歴史上実在する人物です
現在にも残る諏訪大社の当主であり、この時代には武将でもあり神でもありな特別な存在です
そして本作では、北条時行を成長させ導く存在として、ある意味では神以上にとても特別な存在です
史実でもおそらく、どう考えても時行の成長に絶大な影響があったことでしょう
逃若党
ちょうじゃとう
概ね本作オリジナルの、時行に近い位置にいる従者達
おっさんだらけになりがちな時代ものを少年マンガに寄せてくれます
それぞれ、戦局を左右し、時行のモチベーションを支える大事な仲間として描かれていますが、特に雫(巫女)は正ヒロイン的な立ち位置と、ファンタジー的不思議を兼ね備えた存在として、最終盤をうまくまとめ上げるための鍵になりそうな気がします
刊行情報
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