著者:缶乃
出版:KADOKAWA(MFC アライブシリーズ)
既刊最新刊:10巻(完結)
目次(ページ内リンク)
百合オムニバス 影響を与え合いながら進んでいく成長と感情
オムニバス形式の百合
メイン級の数名を追い続けるのではなく、複数カップルが入れ替わりながら描かれるオムニバス形式です
一人当たりの掘り下げがしにくくなるので個人的にあまり得意ではありません……が
軸になるメインカップルが存在して、再登場やチラ見せもありなので、ハイブリッド的というか完全なオムニバス形式ではありません
とある学校を舞台にして、特定のコミュニティで切り取るのではなくちょっとずつ関係を繋いでいく形なのでなんていうんでしょう、人物相関図はそれぞれのカップル間でも繋がっている感じになっています
一つのエピソードの掘り下げをしている間に、ちゃっかり次の準備が始まっていたりします
その辺の構成は立体的で秀逸だなぁと思わされます
ただちょっと、キャラが多くて本格的に掘り下げが開始される前に登場してくる仕様なので、じっくり付き合わないとキャラがよくわからなくなる弊害も
切り替えはシームレスになるのでいいんですけどねぇ、難しいところです
白峰 あやか(しらみね あやか)と黒沢 ゆりね(くろさわ ゆりね)
名前の時点で対になっている二人
キャラが多いのでこういうわかりやすい方が助かります
白峰あやかの方はちゃんとした優等生タイプですが、黒沢ゆりねは真面目に取り組まなくても出来ちゃうタイプ(しかもゆりねの方が大抵上)
よくある構図ではありますが、その組み合わせがカップルになるのは案外珍しいでしょうか?
勉強だけでなく運動もできるゆりねは、様々な部から勧誘を受けています
とりわけ熱心なのが陸上部です(伏線)
が、断るゆりね
しかしここではただ怠惰な理由で断っているのではなく、何か意味ありげな雰囲気が描かれます
クールで一匹狼みたいなイメージが定着しかけているところで、あやかがクラスメイトとの橋渡しを
何やらキラキラしているゆりね
あやかは単に、ゆりねに遊ばせてその間に成績を逆転しようというだけなのですが、何かがゆりねの琴線に触れたようでした
ここから先はだんだん、ゆりねの内面に触れていきます
そこには、なんでも出来すぎるがゆえの疎外感と、自分に挑んでくれる人を求める気持ちが
ものすごい劇的な展開があるわけではありませんが、そこはまだ物語の始まり
たくさんのキャラが登場する大きなストーリーの流れの中で、仲を深め成長していくのでしょう
瀬尾 瑞希(せのお みずき)と二階堂 萌(にかいどう もえ)
この二人は陸上部所属で、瑞希が選手、萌がマネージャーの関係です
ということで、ゆりねを勧誘していた二人です(まあ熱心に勧誘していたのは萌だけですが)
こんな風に有機的にキャラが関係しているのは本作の面白味の一つですね
ちなみに瑞希とあやかは寮のルームメイトだったりします(これはわかりにくさを助長している気がするのですが)
ということであやかとゆりねに若干の視点を残したまま、瑞希と萌の掘り下げに移行します
特に萌があまりに熱心に勧誘を持ちかけるので、手軽に一発解決、ゆりねは勝負で片をつける提案をします
現役陸上部より何もせずとも早いとは……
とフィクション全開の万能ぶりはさておき、勝負はゆりねの勝利に終わります
しかし結果は、ある意味萌の計画通り
速い人と走った方がタイムが伸びることがある
結局、瑞希の練習相手としてゆりねを求めていたのでした
そういうことであれば、ちょっと興味をを持つゆりね
求めていた居場所が、また少しだけ見つけることができたのかもしれませんね
視点を行き来しながら仲を深めていく
とりあえずこんな感じに、キャラが交流しながら物語は進んでいきます
オムニバスといえばそうですし、短編連作的な要素もあると思います
お気に入りのカップルで続けてほしい感じもしますが完結済みなので最後まで追えなくなる心配はありません
個人的にメインカップルはかなりいい感じだと思うので、ひとまず最初の方だけでも読んでみてもいいのではないかと思います
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