おすすめ作品ピックアップ紹介「チ。―地球の運動について―」

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アイキャッチ出典:出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_1巻』@小学館
目次(ページ内リンク)

ガリレオ・ガリレイの「それでも地球は動く」は多くの人が知っている、地動説というものがどういう風に扱われてきたか端的に表している言葉でもあるでしょう
このマンガは、ガリレオに至る前、もう少し前の地動説の運命……のようなものを描いたものです
こうした実在の人物を出すと史実を描いたもののようにも感じられるでしょうが、あくまでフィクションには違いありません(C教という言い方をしている概ねキリスト教であろう宗教があるなど、限りなく現実に近いフィクションという感じでしょうか)
ですが、きっとこんなようなことがあったんだろうと思えるリアリティがあります
半分ネタバレにもなりますが、このマンガでは地動説に関与し、礎となった一人一人が主人公的なポジションを交代していく、群像劇的な体裁が取られています
その一人一人の姿勢が力強く、魅力的なドラマを形作っていて、人は何のために生きているのかみたいなことも考えさせられます


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_1巻』@小学館


最高のスタートとしての1巻


感想は人それぞれあるでしょうが、個人的な感想としては1巻が一番面白く、そしてピークです
だからとりあえず1巻を読んでみて!と勧めやすいし、ただその代わりに一番美味しいところは食べ終わった後になってしまうところでもあるのですが……
と言っても、ガクッと落ちたりはしません
全体通して、その8割、9割の面白さは維持しています


地動説と異端とC教

さて、物語は世界チョレーと豪語する、優秀さ折り紙付きなラファウを主人公としてスタートします
大学に行けるだけでもほんの一握りの時代、ラファウはしかも12歳という若さで進学を決めてしまいます
世界チョレーと思ってしまうのも無理もないというものです


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_1巻』@小学館


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_1巻』@小学館


そんなラファウは、観測(現在の天体観測よりは、天体の動きを学術的に記録する意味合いが強いでしょうか)を趣味として嗜みます
が、社会的には神学などの学問が優先されるため、観測はやめろと言われてしまいます
合理性を優先するラファウは素直にやめようかと一度は考えましたが……そこで出会うのが「異端者」のフベルトです


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_1巻』@小学館


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_1巻』@小学館


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_1巻』@小学館


フベルトもまた、研究のために観測を必要としていましたが拷問の末に視力がだいぶ低下してしまったようで、ラファウの力を必要とします
何の得にもならない話ですが……もっといい観測地があるという言葉に即落ちするラファウ
なんならフリオチのようで表現はコメディチックでもありますが、ここのラファウに共感できるかどうかがこのマンガを面白く読めるかどうかとイコールかもしれません
合理よりも、興味が勝ってしまうのですね
さて、このフベルトの観測と研究が何のために行われているか……まあ言うまでもありませんね


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_1巻』@小学館


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_1巻』@小学館


地動説の登場です
この後の展開はこれ以上は語らないでおきましょう
ここまでも十分良い導入ですが、この後の展開も素晴らしく読みやすくそれでいて驚きと納得感のある構成です
是非全巻読んで欲しくもありますが、1巻完結の短編として読んでも満足感もあるし面白いと思います


肌色成分(頭皮)多めでお送りしております


ハゲではありません、トンスラです
トンスラとは、聖職者が頭頂部の髪の毛を円形状に剃る髪型のことだそうで、「回心、従順」のしるしであるそうです
教科書のフランシスコ・ザビエルですね(どうやらイエズス会にはトンスラの風習がないので、ザビエルもそうではなかった説があるようです……面白いですね)
で、問題は第5巻
ハゲのおっさんだらけの表紙という、ある意味、最も攻めた表紙ランキングがあったとして一位をあげたくなるくらいの攻めた表紙になっています!
おっさんとは言いましたがうち二人はどうやら若いようですが別に若かったところで、です
と、ちょっとテンションをあげてしまいましたが、中身ももちろんハゲたおっさん成分多めではあるもののそこは安心してください
ちゃんと女の子も出てきます
とはいえ、この表紙で敬遠する人すら出てきかねない勢いな気がするので、ちょっと触れておきました


チ。―地球の運動について― ハゲたおじさん達
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_5巻』@小学館


ヨレンタ

本作のメインヒロインと言ってもいい(異論は認める)のがヨレンタです
また群像劇のような体裁をとる本作において、多面的な役割を担う進行上重要なキャラでもあります
詳細はあまりここでは語りませんが……
ひとまず登場時点では、ヨレンタは天文が好きな女の子という感じで登場します
知性と自由、大人と子供が共存するような魅力が描かれます
ヨレンタには学問の世界で十分に活躍できる才能を持っていましたが、学問において女性が差別される世界観の中で思うように生きることはできません


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_3巻』@小学館


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_3巻』@小学館


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_3巻』@小学館


ヨレンタの住む街には、上流階級の人の知的遊戯として掲示板で問題を出し合う文化があります
そこにあった天文の問題……難問であるのにすぐに解くことのできるヨレンタはやはり優秀なのでしょう
ここでの出会いにより、彼女の運命が動き始めます


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_3巻』@小学館


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_3巻』@小学館


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_3巻』@小学館


かっこいいトンスラ兄さんバデーニ

とある事情で独眼竜スタイルになっているバデーニは、中盤の主人公的な立ち位置で活躍します
聖職者でありながら、その言動は高慢な天才学者という感じで面白みがあります
一緒にいるオクジーも、その自信満々っぷりに驚きつつも仲良くやっているので、ここのいいコンビっぷりも結構好きです


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_3巻』@小学館


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_3巻』@小学館


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_3巻』@小学館


天動説の研究に出会った二人は、天動説を完成させるためにはデータが少ないため協力者を探します
そうして出会うのが当然、ヨレンタですね
もちろん、天動説の研究は異端ととられる可能性が高く、協力してくれる相手も選ばなければ危険です
その中でバデーニがヨレンタに向けて言い放つのが(直接ではないですが)「研究者だからだ」という言葉
バデーニは高慢で、合理的にリスクを排除し一人で研究を完成させたいがため、研究自体はヨレンタに協力させません
が、結局唯一、ヨレンタを女性だとかそういう先入観を抜きに研究者だと認めたのは、バデーニだけです
中盤はこのようなキャラ同士の関わり合いもよくできていて面白いです


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_3巻』@小学館


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_3巻』@小学館


チ。―地球の運動について―
出典:魚豊『チ。―地球の運動について―_3巻』@小学館


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